昨日見た空は、きっともう何処にも無くて 明日見えるはずの空の色は僕にはまだわからない。
2013.09.15 Sun
独りの部屋を目覚まし時計のアラームが横切る。
テレビのリモコンに手を伸ばしてスイッチを入れれば
いつもどおり、丁度天気予報の時間。
どうやら今日は晴天らしい。
どうせ殆どの時間を空調の整えられたビルの中で過ごすのだから
どうでもいいのかもしれないけれど。
体を起こして洗面へ向かう。
顔を洗って鏡に映る顔は
やっぱり少し疲れているのかな。
最近、空を見る暇もありはしない、なんて思っても
本当はそんなはずはないってこと、
誰よりも自分が解っている。
ざっと朝刊に目を通せばそろそろ家を出る時間。
重さの割に薄い気がする鞄を手にして僕はドアを開ける。
通りに出たところで、老婦人にすれ違う。
薄茶の犬が僕に興味を示してくる。
「おはようございます」
赤い首輪のその犬と、勿論その主人に軽く頭を下げて過ぎる時に
「行ってらっしゃい、気をつけて」
彼女は僕に当たり前のようにそう声を掛けた。
“行ってらっしゃい”なんて、随分と久しぶりの言葉だった。
情けないことに驚いて即座に何も返せない僕に
眉を顰めることもなくその人は、にこやかに頭を下げて過ぎて行く。
「・・・行ってきます」
呟くようにやっと返した言葉はきっと届かなかっただろうけれど・・・。
駅に向かういつもの道の街路樹は
気がつけば秋の色に染まり始めていた。
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