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  昨日見た空は、きっともう何処にも無くて       明日見えるはずの空の色は僕にはまだわからない。
2024.11.23 Sat
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2013.08.18 Sun
通りすがりの空き地の日陰の片隅で
その花は咲いていた。
ひっそりと、でもなく、胸を張って、でもなく
ただ、そこに咲いていた。
花の名前なんて詳しくはないから分からないけれど
似たような花なら見たことがある。
今ではない、季節に。
だからそれは季節外れの狂い咲きなのかも知れないけれど
きっと、決して間違いなんかではない。
大切なのは、そこに、そうして咲いていること。
誰かに見られなくてもいいし、ましてや艶やかさを誉められる必要なんて無い。
片隅でまっすぐに、咲いている。
気付かれなくていい、息を呑むほどに美しくなくてもいい
花は、ここで
咲いている。
きっとそれが当たり前のことなのだ。

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2013.08.18 Sun
木漏れ日が揺らめいて、ふと懐かしい空気を感じた気がした。
特に予定のあるわけでない休日の午前中
駅裏の住宅地から少しだけ離れた林道に入れば
こんな夏晴れの空の下でも、ちょっとした散策には快適な温度になる。
日陰と日なたの混ざり合う細い道沿いには
羊歯に露草、小ぶりな白い花は、なんだったか。
ざわりと梢が風に揺れて、
頭に乗せた、麦わら帽子がそれをうける。
『ほら』
少年の夏に被っていたものとは大きさも形も違うけれど
遠い昔の母の声を思い出して軽く手で直し
土の道をのんびりと歩く。
小径沿いのベンチには、誰が忘れたか虫取り網が、ひとつ。
夏休み、そんな懐かしい言葉を唇に乗せてみる。
裸足で駆け出した、地面の熱さ
降り注ぐ蝉時雨、太陽のような向日葵の強く鮮やかな花弁の色。
微かに響く風鈴の音、汗をかいたグラスには砂糖入りの麦茶。
幾つの夏を過ごしてきたのだろう。
そして僕はこれから幾つの夏をこうして過ごしていくのだろうか。
吹く風が零した陽光に、また少し目を細めた。
やがて林道は終わりを告げて、公園に出る。
青空が開け、白い雲が眩しい。
遊歩道に落ちる影は色濃く、これからの気温の上昇を予感させる。
このまま公園をぐるりと半周する形に少し歩き、その先の駅を抜ければ
大型のショッピングモールが展開している。
少しばかり賑やかすぎるかも知れないけれど
一画には品揃えの良い大型の書店があるのだ。
久しぶりに覗いてみるのもいいかもしれない。
確か世界観が気に入って、読み続けているシリーズの新刊が出ていたはず。
それから・・・。
ふと、そんな余暇は久しぶりであったと気付く。
大きくゆっくりと呼吸をする。
草の匂いと土の匂い、夏の風が僕を満たしていくのを感じる。
「うん」
そう、大丈夫。
空は青く、風は透明だ。

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2013.08.18 Sun
いつもよりもゆっくりと目を覚ました朝
少しだけ穏やかな一日の始まり。
半分眠りの世界に残る体を熱めのシャワーで起こしたら
高くなりつつある朝日の差し込んだキッチンで一息。
小さな窓を開ければ
その向こうでは、夜の間に降りた露を太陽が煌めかせていた。
昨夜見た天気予報のマークは、晴れ。
どうやらきっちり正解らしい。
取りたてて予定のない、日曜日。
毎日は、当然のように流れ去り
いつの間にかに一週間は終わっていく。
待っていてもくれないし、どれだけ急いても変わりはしない。
「さて、と」
湿り気の残る髪をタオルでざっと拭きながら食器棚に近付いて
上から二段目の少し奥、大きめのガラスのマグに手を延ばした。
手にとってダイニングテーブルに置くと
丁度入り込んだ陽光が側面のガラスを瞬かせた。
眩しさに思わず瞼を閉じたその一瞬の暗さが
ふと、僕に過去の景色を呼び起こす。
カップで氷の鳴る音と、大きな窓のあるリビングルーム。
あれはもう随分と昔のこと
まだ少年だった僕にアイスカフェオレの美味しさを教えてくれた
懐かしい人。
苦い味の得意ではなかった僕のために
ミルクとガムシロップを溶かし込んで、氷は多めに。
小さく歌を口ずさみながら
カラフルなストライプのストローをすい、と差して。
『欺されたと思って付き合ってよ』
そう言って彼女はカラリと笑った。
遠い夏の一場面。
『ね』
笑顔の似合う人だった。
いつの間にか僕は少年時代を遠く離れ
すっかり大人になって味覚も変わった。
専ら手にする飲み物は
ブラックのコーヒーかミネラルウォーター。或いはビール。
甘い飲料に手を延ばすなんて久しく無かったけれど
たまにはそれもいいかもなんて
彼女の手順を思い出しながらのアイスカフェオレ。
コーヒーの濃い色をミルクが和らげていく。
カロン、と揺れた氷の音の向こうで
懐かしい声が聞こえた気がした。
『ほら、悪くないでしょう?』

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