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  昨日見た空は、きっともう何処にも無くて       明日見えるはずの空の色は僕にはまだわからない。
2024.11.23 Sat
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2013.08.18 Sun
いつもよりもゆっくりと目を覚ました朝
少しだけ穏やかな一日の始まり。
半分眠りの世界に残る体を熱めのシャワーで起こしたら
高くなりつつある朝日の差し込んだキッチンで一息。
小さな窓を開ければ
その向こうでは、夜の間に降りた露を太陽が煌めかせていた。
昨夜見た天気予報のマークは、晴れ。
どうやらきっちり正解らしい。
取りたてて予定のない、日曜日。
毎日は、当然のように流れ去り
いつの間にかに一週間は終わっていく。
待っていてもくれないし、どれだけ急いても変わりはしない。
「さて、と」
湿り気の残る髪をタオルでざっと拭きながら食器棚に近付いて
上から二段目の少し奥、大きめのガラスのマグに手を延ばした。
手にとってダイニングテーブルに置くと
丁度入り込んだ陽光が側面のガラスを瞬かせた。
眩しさに思わず瞼を閉じたその一瞬の暗さが
ふと、僕に過去の景色を呼び起こす。
カップで氷の鳴る音と、大きな窓のあるリビングルーム。
あれはもう随分と昔のこと
まだ少年だった僕にアイスカフェオレの美味しさを教えてくれた
懐かしい人。
苦い味の得意ではなかった僕のために
ミルクとガムシロップを溶かし込んで、氷は多めに。
小さく歌を口ずさみながら
カラフルなストライプのストローをすい、と差して。
『欺されたと思って付き合ってよ』
そう言って彼女はカラリと笑った。
遠い夏の一場面。
『ね』
笑顔の似合う人だった。
いつの間にか僕は少年時代を遠く離れ
すっかり大人になって味覚も変わった。
専ら手にする飲み物は
ブラックのコーヒーかミネラルウォーター。或いはビール。
甘い飲料に手を延ばすなんて久しく無かったけれど
たまにはそれもいいかもなんて
彼女の手順を思い出しながらのアイスカフェオレ。
コーヒーの濃い色をミルクが和らげていく。
カロン、と揺れた氷の音の向こうで
懐かしい声が聞こえた気がした。
『ほら、悪くないでしょう?』

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