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  昨日見た空は、きっともう何処にも無くて       明日見えるはずの空の色は僕にはまだわからない。
2024.11.22 Fri
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2015.05.01 Fri
見上げればビルの間の雲間から
半端月が顔を出している。
空車のランプを点けたタクシーが
少しばかり伸び気味の前髪を僅かに揺らしながら
目の前を通り過ぎた。
毎日はよく分からない忙しさに押し流されて
感覚も無いままに遠ざかっていく。
ただただ時間が過ぎていくようで
僕は果たして
前に進めているのだろうかと
思ってしまったりもするけれど。
不可も無いが、可も無い
そんな日々を繰り返しているばかり。
溜息をつく前に
信号は青に変わった。
渡る人の多くは無いスクランブル交差点は
どこか妙に広く思えて、青信号がやけに長い。
疲れた靴の背中がいくつか
僕と同じように駅に向かっている。
もしも、なんて子供じみた空想が
束の間頭の片隅を過ぎった。
例えばこの交差点の真ん中で後ろを振り返ったとしたならば
よく似た違う今が存在しているんじゃないかなんて。
もう少し違った時間があったりするんじゃないかなんて。
足を止めかけて小さく笑った。
ビルの電光掲示板が明日の天気を告げている。
降水確率30%、ところにより一時雨。
大丈夫
傘だって持っている。
そう結局
僕の毎日は
それなりにそう悪いものでもないのだろう。

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2015.04.21 Tue
パソコンのエンターキーを押して、温くなったコーヒーを飲み干した。
お疲れ、と自分に小さく言ってみる。
住み慣れた独りの部屋に微かなドライブの音。
クリップを取り出すために机の引き出しを開いて
何とはなしにそれに手を伸ばした。

子供の頃に年の離れた従兄弟からもらったプリズムを
僕はまだ、引き出しの中にしまってあって。
当時親戚の家が営んでいた仕事の不良品であったらしいそれは
所々硝子面が傷ついていたけれど
僕にはすごい宝物だった。
駄菓子屋の一番大きなあめ玉ぐらいの、ごろっとした三角を
日に晒してはその虹色の影を楽しんだものだ。
地面に映る小さな虹は、僕だけのものだった。
手を上げて、蛍光灯に透かしてみる。
またたく反射光に目を細めた。
きっとこの光は
あの頃から変わらないのだろう。

そう、明日はちょっと早起きをして
一つ先の駅まで歩いてみようかなんて
なんだか不意に、そう思った。

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2015.03.12 Thu
いつまで経ってもどうにも大人になれない僕は
些細な事に躓いて、立ち止まって
時々は蹲ったり、下を向きたくなったり。
少し進んで、そこから戻って
きっとそれの繰り返し。
やらなくてはならないことはいつだってたくさんあって
追われるばかりで時間が過ぎ去って行くようで。
自分に、何度目かの溜息。
流石にどうにも情けないから、
気分転換でもしてみようかと本棚に向き合って。
久しく手にしていなかった一冊を取れば
不意にはらりと、何かが落ちた。
拾い上げればそれは一枚の写真だった。
もう随分と前のもの。
春、三月。卒業式のスナップ。
友達と肩を組んで笑う自分が
少し黄ばんだ時の向こうで、こっちを見ていた。
懐かしさを覚えて軽く目を閉じてみる。
周囲のざわめきと、少しだけほこりっぽいような当時の空気が
蘇った気がした。

あれから僕は
どれだけ進んできたのだろう。
ほんの少しでも僕の道を
前に歩いて来ているのだろうか。
僕の道は僕にしか辿れない、そう分かってはいるけれど
行く先の曖昧なそれを、僕はどうして歩けるだろう。
踏み出す足元が地面だとは限らないのに。

でも。
きっとそれでも
僕は歩くのだろう。
立ち止まりながら、後悔も重ねながら。

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2015.02.16 Mon
部屋の窓を、なんとはなしに開けてみれば
夜空には月が冴え、星の光も白い。
深夜に近い時間、随分温度を下げた外気が頬を刺した。

上手く出来ないことも、思うとおりにいかないことも、
いつまで経っても、ちっとも減らない。
いい加減、色々な事を上手く処理できてもいい気がするのに
全然、そうはならなくて。
どうしたって僕は僕でしかないのだから
僕らしく、このまま進んで行けばいい、
そう思おうとするけれど
果たしてそれが本当に正解なのかも分からないから
動けなくなったりもするわけで。
社会に出て、時を過ごして
それなりの年になると、
必要とされるのは経緯では無く、結果。
例えどれほど努力をしても
結果に繋がらなければ意味が無い。
もちろん、それは必要なことで、
当たり前のことなんだろう。
けれど。
ネクタイを締めるのにも戸惑っていた数年前の僕が
今の僕を見たら、何と言うのだろうか、なんて。

もう暖かい部屋に戻ろう。
ビールグラスの向こう側の月は
あの頃と少しも変わってはいないのかもしれない。
それがいいのか悪いのか
僕にはやっぱり分からないけれど。

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2015.01.10 Sat
冬寒の街は、風景も色数を減らしているようで
頬を通る風の冷たさに、コートの襟を立てた。
手にした鞄が、少し重い。

流れる毎日は全く同じでは無いけれど
昨日と今日が別段代わり映えもするわけでも無くて。
やらなくてはならないことはいつだってたくさんあるから
それを消化するばかりに時間が過ぎて行ってしまう。
せめて前を向いていようと思っても
なかなか思うようにはいかなくて。
躓いて、立ち止まって
やっと動き出してもまたすぐに
足を取られて、蹲って。
そんなことばかり。
でも。
最近少しだけ思うようにもなったんだ。
そんなに必死に急がなくてもいいのかもしれない、
無理に走らなくてもいいのかもしれない、と。
確かに忙しない毎日ではあるけれど、
ゴールが何処にあるのかなんて
きっと何処まで行っても見えないんだろうし
慌てるばかりじゃ解らないことだって、きっとあるはず。
それを逃げというのか言い訳というのか
とらえ方は色々あるんだろうけれど、
僕は今、そう思ったりするんだ。
少しの余裕を持っていられたら、いい。
回りを見られる、そんな余裕を。
まあ、なかなか上手くはいかないけれど。
自嘲気味に息を吐いて角を曲がれば
常緑の垣根が北風に乾いた葉擦れの音を立てる。
斜めに差し始めた弱い冬日を受けて
緑の濃淡が微かに揺れた。
そう、
例えば草木の緑も、ひといろではない。
視線を巡らせたのならば、様々に色は存在しているのだ。

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